藤子・F・不二雄といえば『ドラえもん』を思い出す人がほとんどだろう。筆者ももちろん好きだ。だがF先生の作品で、心に強く残っているのはSF短編だった。
A先生のブラック短編とF先生のSF短編。たくさん魅力的なキャラを生み出してきた2人だが、それでも両氏の短編がとても好きだった。F先生のSF短編集はもう過去に何度か発売されている。それらの本も当然持っている。
なのになぜまた購入したのか?それは今回の『藤子・F・不二雄SF短編コンプリート・ワークス 愛蔵版』がコレクションとして保管しておきたいぐらい、素晴らしいものだったからだ。
どれほど素晴らしいものだったのか、写真付きで詳しく紹介しよう。
『藤子・F・不二雄SF短編コンプリート・ワークス 愛蔵版』とは?
藤子・F・不二雄氏が描いた「SF短編シリーズ」全111作品を、装いも新たに『藤子・F・不二雄SF短編コンプリート・ワークス』として、全10巻で刊行するシリーズだ。
1~6巻までが「SF・異色短編」シリーズで、7~10巻を「少年SF短編」シリーズとなる。
愛蔵版は2024年の3月までの間に、毎月1冊ずつ発売されるスケジュールだ。1巻の発売日がずれた関係で、6月は2冊出ることになっている。今後も発売日が変更される可能性があるので注意しよう。
刊行スケジュールと初版限定別冊の内容
※刊行スケジュールは変更となる可能性があります
- 2023年6月1日(木)第1巻『ミノタウロスの皿』
初版限定別冊:『ミノタウロスの皿』「ビッグコミック」掲載ver. - 2023年6月30日(金)第2巻『ノスタル爺』
初版限定別冊:『ノスタル爺』「ビッグコミックオリジナル」掲載ver. - 2023年8月1日(火)第3巻『カンビュセスの籤』
初版限定別冊:『カンビュセスの籤』「別冊問題小説」掲載ver. - 2023年9月1日(金)第4巻『パラレル同窓会』
初版限定別冊:「SF短編資料集成(仮称)」①※詳細は後日発表 - 2023年10月2日(月)第5巻『夢カメラ』
初版限定別冊:「SF短編資料集成(仮称)」②※詳細は後日発表 - 2023年11月1日(水)第6巻『異人アンドロ氏』
初版限定別冊:「SF短編資料集成(仮称)」③※詳細は後日発表 - 2023年12月1日(金)第7巻『ポストの中の明日』
初版限定別冊:『みどりの守り神』「マンガ少年」掲載ver. - 2023年12月28日(木)第8巻『流血鬼』
初版限定別冊:『流血鬼』「週刊少年サンデー」掲載ver. - 2024年2月1日(木)第9巻『宇宙船製造法』
初版限定別冊:『宇宙船製造法』「週刊少年サンデー」掲載ver. - 2024年3月1日(金)第10巻『征地球論』
初版限定別冊:『赤毛のアン子』「少女コミック」掲載ver.
小学館の本気
どれぐらいの本気度なのか、表紙を見てもらえればすぐに分かるだろう。今回の収録作品である『ミノタウロスの皿』に登場するヒロイン、ミノアがでかでかとケースに書かれている。
ケースのサイズは約26cm×18.5cmと大きい。厚みも3cmほどある。価格は税込4780円とお高めだ。
ケースの裏面は同じく収録作品である『ヒョンヒョロ』のウサギだ。
ケースの背と本の背はこんな感じ。
全部で10巻刊行される予定で、第1巻の初版限定で『ミノタウロスの皿』雑誌掲載ver.が同梱される。何が何でも初版で手に入れたい。
メタルプレートにもミノアのイラストがプリントされている。
重さもズッシリと1kg越えだ。
ケースから取り出すと本体にメタルプレートがくっついているのが分かる。
表紙は『ミノタウロスの皿』の一場面が描かれている。
裏面は『ヒョンヒョロ』の一場面。写真では分かりづらいが、地が銀一色で青い部分がエンボスになっている豪華仕様だ。
カバーの中に何か描かれている。
分かり辛いが『ヒョンヒョロ』に出てくる街の風景が描かれていた。細かいところまでこだわっているのが伝わってくる。しかもこの絵をチョイスするあたり、憎らしいほどのいいセンスだ。
こちらは通常版。
初版限定の別冊付録もいい
次は初版限定の『ミノタウロスの皿』雑誌掲載ver.を見ていこう。本とケースの間に別冊で入っている。
簡単に話を説明すると主人公が不時着した星では牛が支配していて、人間を家畜として飼育していたという内容。
雑誌掲載時の説明が書かれ、ページ数も27ページから始まっている。
ドーンと見開きで掲載雑誌と同じサイズで読める。右上にはビッグコミックのロゴ。柱にもミノタウロスの説明。下のほうにも何やら書かれている。
毎日占い暦なる占いが掲載されていた。大人の男性読者がメインの雑誌だけに、ギャンブルやガールハントまでの占いだ。
主に日付とお告げが。この日はパチンコをやめたほうがいいらしい。代わりにオートレースをすすめていた。今ではまずい感じの内容も、あえて当時のまま書かれているページもあった。
表紙をめくると
ページを1枚めくると出てくるのは、ミュシャ風なミノアのイラスト。バッジやコースターなんかにしてもよさそうなデザインだ。
そして目次。今回は全部で11作品収録されている。
さらにめくるとF先生の写真とサインが印刷されたページが出てくる。
第1巻の収録内容
第1巻の収録作品は全部で11話になる。
- ミノタウロスの皿
- カイケツ小池さん
- ドジ田ドジ郎の幸運
- ボノム =底ぬけさん=
- じじぬき
- ヒョンヒョロ
- 自分会議
- わが子・スーパーマン
- 気楽に殺ろうよ
- アチタが見える
- 換身
ネタバレ一切なしの簡単な内容紹介を、扉絵と共に紹介していこう。
まずは『ミノタウロスの皿』が1話目にある。こちらは別冊のほうで紹介したので割愛する。
2話目は『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』のプロトタイプとなる、『カイケツ小池さん』。オチの先がどうなるのか、気になる作品だ。
3話目は「SFマガジン」に掲載された『ドジ田ドジ郎の幸運』だ。ついてない男がどこからともなく現れたロボットにより、バカヅキになる!?
4話目は『ボノム =底ぬけさん=』だ。底ぬけにお人よしな主人公は本当に怒らずにいられるのか?なかなか今だといろいろ無理そうな、登場人物たちが出てくる。
5話目は『じじぬき』。ババヌキならぬジジヌキ。生きていると邪魔者だが、死ぬと分かる家族の反応が面白い。
6話目の『ヒョンヒョロ』も「SFマガジン」掲載。今回の裏表紙に描かれたウサギが登場する話。ヒョンヒョロとはいったいなんなのか?最後のオチが印象的な作品。
7話目は『自分会議』。こちらも「SFマガジン」に掲載された作品。未来からやってきた自分が今の自分を交えて会議を開く。オチがこれも印象的。
8話は『わが子・スーパーマン』。子どもに驚異的な力があると結構恐ろしいと思わせる話。
9話目は『気楽に殺ろうよ』。タイトルどおりの世界観の話。価値観や倫理観なんて世界が違えば変わると考えさせられる。
10話目は『アチタが見える』。予知能力を持った子どもに困惑する両親の話。オチがどういう意味なのか、ちょっと考えたくなる話。
最後の11話目は「SFマガジン」に掲載された『換身』。中身が別の人間と入れ替わってしまう話。ただし、3人の間で入れ替わってしまう。
最後まで楽しめる
最後に下記からの引用インタビュー記事が掲載されている。
- 『愛蔵版 藤子不二雄SF全短篇 第1巻 カンビュセスの籤』(1987年2月20日発行)の記事
- 『藤子・F・不二雄オリジナル・アニメ全集VOL.3』(1992年)映像からの書き起こし
- 『月刊ニュータイプ』(1990年6月号)の記事
- 『SFマガジン』(1983年6月号)の記事
故人の愛蔵版にありがちな有名人の寄稿文とかではなく、F先生が過去に答えたインタビュー記事だったのが個人的には嬉しかった。作品を生み出すまでの過程や葛藤、それらが少し分かる。
ファン必携
この本の魅力がどれぐらい伝えられたか、正直言って分からない。価格も気軽に買える値段ではないし、収録作品もファンなら過去に何度となく読んだ話だろう。確かに話を読むだけなら、愛蔵版でなく通常版を購入すればいい。
ただ、F先生ファンなら絶対に持っておきたい1冊だと、激しくオススメしたい。なぜなら、これこそがファンが待ち望んだ究極の本だからだ。雑誌掲載時と同じサイズで読める上に、コデックス装により見開きで読むことができる。小さい単行本で読むよりも、やっぱり大きいサイズのほうが物語をより感じられる。
また、初版限定でついてくる別冊付録は、この本を買うならマストアイテムだ。必ず初版で購入するために、今後の刊行分の予約は忘れないようにしよう。
後で購入しようと思った時には、もう入手できない可能性もある。コレクションアイテムとして、保管用でシュリンクを外さない1冊と、読む用の2冊購入したいぐらいの本だった。
第2巻は6月30日発売予定で、初版限定別冊は『ノスタル爺』「ビッグコミックオリジナル」掲載ver.だ。無事入手できたらまたレビューをしたいと思う。
参考リンク:小学館
■商品データ
商品名 | 藤子・F・不二雄SF短編 コンプリート・ワークス 愛蔵版 第1巻 |
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価格 | 4780円(税込) |
出版社 | 小学館 |
総ページ数 | 304ページ |
収録作品数 | 11作品 |
発行日 | 2023年6月1日 |
初版限定別冊 | 『ミノタウロスの皿』 「ビッグコミック」掲載ver. |