【洋菓子工房ZEN工場直売会】という怪しげなチラシがポストに入っていた。じっくり見てみると笑っちゃうぐらい胡散臭いチラシだ。あまりも怪しいので逆に行ってみたくなってきたぞ。
当日行ってみたら、なんと雨が降ったにも関わらず長い行列ができていた!3種類購入した商品の感想、販売者「洋菓子工房ZEN」と製造者の「工場」の違いなど、今回わかったことをレポする。
これが洋菓子工房ZENのチラシだ!
北海道と思われるシルエットと「工場直売会」。まるで北海道にある洋菓子工房ZENがやっている、工場直売会だと思ってしまう。
レイアウト・字体・そして文末に頻繁に使われる「!!」など怪しい雰囲気が満載だ。
「人気No1.」「限定◯個」「スタッフイチオシ」「オススメ」「超濃厚」「極ミルキー」ほぼ全てのケーキにこんな感じの言葉が書いてある。一体どれがオススメなんだ?全部ってことか?
「お徳用」の切り落としとホールケーキの価格が同じくらいって?量が多いのか?それとも高級ケーキの切り落としなのか?うーん、謎だ。
「洋菓子工房ZEN 特濃レアチーズケーキ」って書いてあったら、洋菓子工房ZENが製造したって思う人がほとんどだろう。しかし、後にそうではないことが判明する。
「北海道産生クリーム使用」って書いてあるけど、まさかこれが北海道風シルエットがある理由?
詳しく見てみると、“主催・販売元 洋菓子工房ZEN 株式会社 快善プロジェクト”とある。製造者とは書いていない。つまり「洋菓子工房ZEN」は工房だが、製造はしていないのだ。
さらに株式会社 快善プロジェクトを調べてみたら、HPの会社概要に「各種イベント企画運営・催事販売」とあり、業務案内にはこう書いてある。
一言で言えば、イベント企画会社です。
株式会社 快善プロジェクトHPより
不動産の「現地販売会」会場などをお借りし、私どもが会場への集客をいたします。
クライアント様は会場にいらっしゃったお客様の接客に集中してください。
その他様々なシチュエーションで集客のお手伝いをいたします。
一度ご相談ください。
もっと詳しく知りたい方は公式HPをご覧いただきたい。
まぁ、一言でいってとにかく怪しい。これだけ怪しすぎると逆に行きたくなる。もはやワザとそうしているのではないかと思えるぐらいだ。なので販売日当日に行ってみることにした。
工場直売会=民家の駐車場!?
会場に近くなると、ノボリがあってわかりやすい。
朝から雨が降ったりやんだりの空模様なので、空いてると思っていたら…
そこには長蛇の列が!
並んで買うのが苦手なので帰りたくなったけど、せっかく来たので頑張って並ぶことにした。
並んでいるとスタッフらしき人に手渡されたのは「ケーキの美味しい召し上がり方」。読んだら後の人に回していくという方式。
角を曲がると特設会場が登場。まさかの民家の車1台分の駐車スペースだった!
いよいよ特設会場の中へ
中に入ると冷凍庫に大量のケーキが入っていた。
冷凍庫の蓋にケーキの価格が貼ってある。
冷凍庫は全部で2つ。
欲しいものを自分で取っていくセルフ方式だ。
常温のケーキはダンボールに入って置かれていた。
すでに売り切れているものもあるぞ。中々の盛況ぶりだ。
ベルトコンベア式に自分でケーキを取って、流れに沿って行くとレジで会計をする。今回は現金で支払ったが、他の支払い方法があるのかは謎だ。冷凍ケーキを購入しても特にドライアイスや保冷剤は入れてくれないので要注意だ。近所の人にしかチラシ投函しないからか?
ケーキの保存方法と解凍方法の紙をくれた。
なにはともあれ無事3種類購入。
ではここから1つずつ食レポしていこう。
その1.切り落とし「クラシックショコラ」
底にはシール。詳しく見てみる。
商品名 | クラシックショコラ (チラシには「切り落とし」とある) |
---|---|
価格 | ¥2200→¥1200(¥1296税込) |
内容量 | 1個 (チラシには「4号ホール約2個分」とある) |
製造者 | 株式会社 菓匠鈴屋将経 |
販売者 | 株式会社 快善プロジェクト |
気になるのは「製造者」。三重県四日市だと……?北海道じゃない!?
そこで、製造者の株式会社 菓匠鈴屋将経を調べてみると、公式HPがあった。
素材に拘り、産地に拘り、美味しい商品をお客様にお届けしたいその一心で、
菓匠 鈴屋将経HPより
お菓子作りを続けて参りました。創業当初から皮に拘ったどら焼きなど和菓子製造に特化し量販店・和菓子店・飲食店様への商品供給して参りました。昨今では、洋菓子部門も強化し、青果市場様とのコラボレーション商品製造なども行っており、業種を問わず今までの経験をいかした商品提案でご指示を頂いております。
お菓子を作っている会社ではあるが、所在地は三重県四日市市だ。北海道は全く関係なさそうだ。
よくわからなくなってきたけど、美味しければ良いので開封していく。
開封して解凍
切り落としなのでその時々で違いがあると思うが、参考までに計測する。
まずは内容量。チラシには「4号ホール約2個分」って書いてある。解凍前の状態で購入したものは296g、全部で14切れ入っていた。
食べる分だけ取り出して解凍する。「切り落とし」なので冷蔵庫で2時間程度で解凍されるようだ。
計測
約2時間たったので、解凍されているはず。
大きさはこんな感じ。大小あるけれど長さ8〜11cm前後。
厚みは約2cm。
表面は粉砂糖?がかかっている。
断面はこんな感じ。
切り落とし「クラシックショコラ」の味は?
う〜ん、ぼんやりした味。チョコレートというよりココアっぽい味だ。
あまり甘くもないがコクもない。生地はパサパサではないがしっとり感も特にない。食べるとポロポロ落ちるぞ。
濃厚なガトーショコラっぽいのかと思ったけれど、ブラウニーだ。常温の焼き菓子、マドレーヌとかフィナンシェとかの感じがする。ブラウニーっぽいっていうのが一番近いと思う。
まずいわけではないが、美味しいってわけでもない。少なくとも濃厚なチョコレートの味は堪能できない。
その2.切り落とし「チーズバー」
裏側。生産者は?
こちらも製造者は菓匠鈴屋将経で三重県四日市市の工場「クラッシックショコラ」と同じだった。
商品名 | チーズバー (チラシには「切り落とし」とある) |
---|---|
価格 | ¥1800→¥1000(¥1080税込) |
内容量 | 1個(12切) |
製造者 | 株式会社 菓匠鈴屋将経 |
販売者 | 株式会社 快善プロジェクト |
開封して解凍
12切れ入っている。
食べる分だけ解凍したいけど、くっついていて綺麗に取れない。むりやり剥がして解凍。
計測
切り落としなので大小あるが、長さ約8〜9cm前後。
幅約2.5cm。
厚み約1.3cm。
表面はこんな感じ。
切り落とし「チーズバー」の味は?
チーズの風味が少しだけあって、レモンの酸味のせいかあまり甘くない。つまりチーズの濃厚さがなくコクもないのでぼんやりした味だ。
生地はしっかりとした密度はなくて軽い。例えると「ラクトアイス」っぽい食べ物だ。
濃厚な味・風味・なめらかさを感じる「アイスクリーム」と、それらが薄まったような「ラクトアイス」の違いに似ている。
こちらもまずくはないが、取り立てて美味しいとは思わない微妙な味だった。
特濃レアチーズケーキ(4号ホール)
こちらの製造者は株式会社マックシューだ。愛知県名古屋市だと……?北海道は??「北海道産の生クリーム使用」で北海道マークを使っているってこと?
商品名 | 特濃レアチーズケーキ |
---|---|
価格 | ¥1700→¥880(¥950税込) |
内容量 | 1個 |
製造者 | 株式会社マックシュー |
販売者 | 株式会社 快善プロジェクト |
残念ながらマックシューのHPは見当たらなかった。検索してみると以前に「スイーツの生産補助・梱包など」ってアルバイト・パート募集していたみたいなので、ケーキは製造していそうだが詳細は不明だ。
開封して解凍
4号ホールは直径12cm。これは1/4に切って解凍した。
計測
厚み約3.3cm。4号ホールの1/4ピースなので、長さは6cm。
表面はなめらか。
断面はこんな感じ。
特濃レアチーズケーキの味は?
残念ながらチーズ感はほとんどない。あまり甘くないが、かといってレモンの風味もあまりない。食感はクリームっぽい感じでムースのように柔らかく、土台の生地もフニャっとしている。
これは特濃レアチーズケーキなのか?口あたりが軽く、チーズのコクや濃厚さも感じないぼんやりした味だった。
ケーキのコスパは?
今回買った3種類のケーキの価格はこうなる。
商品名 | 内容量 | 価格(税込) | 1つあたりの価格 |
---|---|---|---|
クラシックショコラ | 14切れ入り | ¥1296 | ¥92.57 |
チーズバー | 12切れ入り | ¥1080 | ¥90 |
特濃レアチーズケーキ | 4号ホール | ¥950 | ¥237.5 |
切り落としの「クラシックショコラ」は、¥1296で14切れ入りなので1切れ¥92.57となる。
食感が軽くブラウニー風のものだった。パフェの中に切って入っていたり、アイズクリームと一緒に食べると美味しいのかもしれないが、単品で食べると濃厚さがなくぼんやりした味だ。
同じく切り落としの「チーズバー」は、¥1080で12切れ入りなので1切れ¥90だ。
レモンとチーズの風味が多少するが、チーズの濃厚さは感じられないぼんやりした味。
「特濃レアチーズケーキ」は、¥950で1/4で1切れとすると1切れ¥237.5にもなる。
商品名に「特濃」、さらにチラシには「超濃厚に仕上げた人気No.1のレアチーズケーキ」と書いてあるが、濃厚さは感じないしチーズの味もほとんどしない。
一体何が濃厚なんだろう?「限定80個!!」「人気No.1」「北海道産生クリーム使用」などいろいろ書いてあったので購入してみたが、正直言ってリピートしたいほど美味しいとは思えない。
いずれのケーキも共通するのは「ぼんやりした味」ということ。チョコやチーズの味が薄くてコクや風味がない。まずいわけではないけれど、美味しくもない。いってみれば普通のケーキだった。冷凍保存なので食べたい分だけ解凍して気軽に食べられるのは良いのかもしれないが…それなりに場所も取る。
そして、割引後の価格でもコスパが良いとは思えない。スーパーなどで見かける「モンテール」や「シャトレーゼ」のケーキのほうが、味もコスパも良いと思う。
味と値段と量のバランスを考えると、残念ながら次回購入することはないだろう。
「洋菓子工房ZEN工場直売会」は怪しいのか?
今回の筆者が行った「洋菓子工房ZEN工場直売会」は、単純に住宅地にある民家の駐車スペースでケーキを販売しているだけだった。ケーキを買いに行くだけなら、何も怪しいことはない。
ではなぜ怪しいと思ってしまうのか?いくつかあげると
- チラシが煽りすぎ
- チラシが怪しすぎ
- 値引き後の価格が安いのかよくわからない
- 販売者と製造者が買ってみると別なので怪しく感じる
- 工場直売会とは思えない規模の売り場
- 北海道との関係性がわからない
行って購入した感想をあげるとこんな感じだ。
公式HPにもあるように、 洋菓子工房ZENはイベント企画会社だ。人をケーキで集客するための催しということだろう。
「洋菓子工房ZEN工場直売会」に行った感想
考えてみるとこの「工場直売会」はうまく誘導・演出されていると思う。最初に考え付いた人は行動経済学者か詐欺師かってぐらい、客の心理を知り尽くしている。
近所にチラシのみでお知らせする「工場直売」という非日常のイベント感が演出されている。開催日は1日のみで時間も1時間30分と短時間、限定◯個などで更に特別感を高めている。行かないと損なのでは、買わないと損なのでは、そんな心理に引き込まれる。
そして定価がわからない商品の値引きという価格トリック。普段目にする商品ではないので、価格が高いのか安いのかわからないけれど「工場直売」なんだから安いのだろう…と勝手に思い込んでしまうのだ。
当日行ってみると思ったよりも人が並んでいて、並んでいるうちにお祭りに行ったみたいな気分になってしまうのもうまい演出だ。並んで待った分、いざ購入する時には2つ3つと買っちゃう心理に誘われる。
3つ買って家の冷凍庫にしまう時、¥3326のレシートを見てふと思ったのは……これって安いのか?ちょっとした美味しいケーキ買えるのでは?というか、高くないか!?と冷静になって思った。
それでも何でも、美味しければ良かったのだけれどね……。